世界を変えたある男の生涯

ヤクザとして頂点を極めアンダーグラウンドの世界で生涯を全うすると思われた男が、医師として世界を変えた。全力で人生を駆け抜けたある男の生涯を描く。

[4] 出会い

校舎から出てきたのは、正洋を含めた8人のヤンキーグループと、洋介を含めたビジュアル系6人の総勢14人。


正門に着く頃には、全クラスの窓から顔が出ていた。



「正洋ってのはお前か?」


小柄ではあるが眼光鋭い本職の人間が言葉を発した。


今まで長崎県内で暴れに暴れてきた正洋達であったが、本職の登場は初めてであった。


「そうですけど、なんですか?」



正洋は、不良ではあるが、初対面の人間、目上の人間に対しては、初めっから突っ掛かる対応はしない。


受け手からすると、ビビってるのか?と取られかねないところではあるが、正洋としては、納得出来る理由であればたとえ相手が敵対グループであったとしても理解は示す。


「うちが面倒みてるもんを可愛がってくれたみたいで、まぁ、こりゃあタダじゃすまないよな」



なるほど、昨日ボコった奴らは、バックにヤクザがついていて、そこの連中が見せしめに来たわけか。


さあ、どうするか。


正洋は、一瞬だけ考えた。


「全員ボコるか」


「ヤクザだけをボコるか」



「マーー」


大通りの方から声が聞こえた。


自転車の前かごに消化器?を2本のせて、元気よく手を振る隣の中学である山津中学に通う遠藤とそのグループ10人。


そして、そのまた後ろからは円蔵中の大樹達20人と一中の石井達も同じく20人。


あと遠くから飛ばしたタクシーが2台ほど。


あっと言う間の出来事だった、高浜中の周りには50人以上の中学生達が本職の周りを囲むように睨みつけていた。



これだけの人数が瞬時に集まったあとで、学校から出てきたガリ勉タイプの不良の根1名もこの輪にくわわった。連絡を入れていたのだ。


あっけに取られる先ほど発言した小柄な本職の小林に対して、根が言った。ちなみに根は各中学に連絡を入れていて遅れて参戦してきたガリ勉タイプの彼だ。



「お前が知らないだけで正洋は有名なんだ」


うろたえる小林の後ろで車のドアが開いた。


パチ、パチ、パチ


手を叩きながら出てきた男、身長は正洋よりは低いが180以上であろう。


ちゃらちゃらしてそうに見えるが、今回集まった本職の兄貴分なのだろうか、頭をさげる小林の姿があった。


「知ってるよ、佐世保連合、通称、佐連の会長さん。三上正洋君やろ。にいちゃん有名人やからな。頭もいい、度胸もある、人望もあれば、根性もある。うちの組にほしいほどじゃ。」



一瞬の沈黙のあと


「お願いがあるんじゃが、この場でこいつにあやまるか、それとも死ぬか、どちらか選んでくれるかのう。」


正洋は笑顔になった。


また、それを見た兄貴分だと思われる竹内も笑った。


「兄さん、いいですね。私が最初に考えてたそちらえの2択と似てますよ。みんなボコるか、本職の方々のみボコるか。じゃあ、こうしません?コインの表か裏で決めるってのはどうですか?表が俺で、裏があんた。出た方が勝ちで、負けた方は必ず選択肢を選ばなければならない。どうですか?」


「そんなのできるわけねえだろ。お前が謝るか死ぬかしかないんだよ」と小林が発言を終わる前に竹内が小林を蹴り倒していた。


「面白い。ワレ、終わったら飯でも食いいかんか。丸10でおごったるわ。」


丸10とは、地元では有名な焼肉屋チェーン店だ。


「死んだら食いいけんから困ったのう。まぁいいや、よっしゃ、焼肉はここにいるみんなやからな。覚えとれ、それ」


間髪入れず10円玉が宙を舞った。


チーン、チーン


家の彫り物が見える側がでた。


「この度は、大変申し訳ございませんでした。以後は、気をつけます。」


大男が土下座した。負けたのは正洋だった。



「よし、これで終わり。いいな菊地」


竹内は満面の笑みでヤンキーの代表と思しき人間に一方的に伝えた。


「よっしゃー丸10に18時集合な。」

正洋が叫ぶと、


「たくさん食え。お前、ちゃんと金かき集めてこいよ。」

と竹内は、先ほどのヤンキーの代表と思しき菊地の肩に手を置いて伝えた。


ヤンキーは小林の方を涙目でみたが、遠くを見ていた。


また、遅れてスーツ姿の学年主任加瀬が校舎をでてきた。オールバックにサングラスまでかけていた。